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委員会

第7回 関西のインフラ強化を進める会 開催日:H31.4.23(火) 開催場所:ホテルプリムローズ

議事
1. 基調説明
「新大阪駅周辺エリアの都市機能強化の提言」
松野 正人 氏(日本製鉄株式会社 大阪支社・
(一社)日本プロジェクト産業協議会 前関西委員会委員長)
2. 基調説明
「「2025年日本国際博覧会」に向けて」
森 清 氏(近畿経済産業局長)
3. 意見交換
4. その他
・大阪・関西万博(2025年)までのインフラ整備(整備内容・整備効果等) 等
・2025年までに予定されているインフラ整備 等
・関西の高速バスターミナルのあり方(案)

2. 基調説明「「2025年日本国際博覧会」に向けて」講演資料(2.69MB)

森 清 氏(近畿経済産業局長)

はじめに

近畿経済産業局の森と申します。関西にどのような産業構造があり、どのようなベンチャーが生まれ、そして、2025年に向けて関西らしい万博を開催していくに当たっての方向性について説明させていただきます。

Ⅰ.関西経済の現状

まず、関西経済の現状です。

関西の経済規模は、福井県も含めた2府5県で16.2%経済です。日本全体の16.2%を関西経済が占めています。何が足りないかというと、面積と公共工事が足りません。何が多いかというと、製造業の事業所数が多く、中小企業の数が多いというのが関西の特徴です。輸出入は、20%ほどあり、関西経済というのは16.2%経済ですが、外国経済に依存する割合がほかの地域よりも相対的に高いといえます。

自動車の登録台数は、15.1%と、経済規模より低くなっています。逆に、百貨店の販売額は24.1%あります。勤労者世帯の消費支出が15.4%で、16.2%より下がります。何故百貨店がこんなに多いのかというと、この16.2%と24.1%の差分が6,000億円くらいで、大体3分の1がインバウンドです。残りのうちの3分の1が、実は名古屋や岡山、広島から関西、特に梅田のあたりの百貨店に購入しに来る方です。つまり、関西以外の方が購入されるのが3分の1になります。残りの3分の1は関西の方で、百貨店で買い物をする「百貨店文化」が関西にはあります。また、関西以外の地域から買い物に来るということは、関西のブランド力というのがあるということです。

関西の人口は、昭和46年あたりから少しずつ日本全体に占める割合が減っていますが、日本のGDPに占める割合が、この40年くらいの間で2回、上がった時があります。

1つが高度成長期末期で、関西の比率が17.5%から20.5%まで、3ポイントほど増えていますが、この時に大阪万博がありました。もう1つ、関西のGDPの比率が上がったのがバブル景気の時です。昭和62年ぐらいから平成3年ごろまでの5年間に関西のGDPの日本全体に占める比率が1%ほど増えており、この時に花博がありました。何が言いたいかというと、みんなで3匹目のドジョウを狙いましょうということです。直近のデータが平成27年度で、先ほどから申しております16.2%ですが、民間機関の予測ではここ数年は、関西経済は全国よりも高い伸び率が予想されており、この勢いを万博の2025年に向けて、どうつなげていくかが重要です。

5つの機関が関西の経済成長率と全国の経済成長率を出していますが、上のほうの数値が関西で、括弧書きのところが全国です。赤で書いてあるのは関西の経済成長率が全国の経済成長率を上回っているところで、2017年、2018年、2019年、2020年までは、関西のほうが良いです。民間が発表する統計では、今後3年ぐらいは関西のGDPの比率が伸びることはある程度予想されますが、万博は6年後ですので、まだまだ関西経済のジェット噴射が必要だと認識しています。

それでは、関西の経済の特徴を説明させていただきます。製造品の出荷額構成比は、輸送用機械が全国だと21.5%に対し、関西は8.8%しかありません。逆に化学やプラスチック、鉄鋼などの基礎素材型産業の割合が高いです。ここ最近、関西は景気がいいという1つの理由には、化学、プラスチック、鉄鋼、金属製品、電子デバイス、電気、繊維、などの分野において、家電などから車の部品関係に進出し、売り上げを伸ばし、関西の景気のよさに貢献しているということです。

関西は、基礎素材、電子デバイスや電気機械の産業のコメとなるところ、また、生産用機械も産業を生み出す部分、すなわち、産業の基盤的な分野が全国に比べて強いです。

GAFAの強みというのは消費者に面と接する。つまり、私はiPhoneを毎日2時間弱ほど見ていますが、消費者に直接接点を持つというというのがGAFAの強みだと思います。関西は、医療やスポーツ産業の集積があります。それから、食や観光資源、歴史文化に優位性があり、全てが消費者に面と向かう産業です。こうした産業スペクトル群が強いのが関西の第2の特徴だと思っています。

最近、多くの経営学者が、「スマイルカーブ理論」を提唱しています。これは、バリューチェーンの両端の付加価値が上がり、にっと笑った曲線を描くという説ですが、関西の産業構造に合っています。

最近の特徴として、左のカーブの部分は、まさに群雄割拠で競争が相当激しい中、関西の企業が頑張っています。一方、右の部分で、GAFAに代表される企業はユニバーサルサービスを推し進めていましたが、GAFAのようなデジタルの世界でもローカル化やコミュニティ化の兆しというのが見え始めており、これこそ関西をブランドとして押し出していくところだと思っています。

製造業出荷額と従業員数の関係で見ますと、中部の製造品出荷額は、約66兆円で関西の約1.2倍、従業者数は145万人で約1.2倍です。このうち輸送用機械だけで中部は出荷額が30兆円ほどあり、約40万人の雇用を持っており、中部は1本足打法です。関東は、出荷額も従業員数も関西の約2倍の規模ですが、輸送用機械だけで18兆円、約34万人の雇用があり、セミ1本足打法です。関西は調べてみてびっくりしましたが、化学が一番で、6兆円で約8万人です。関西は、ばらばらというのが特徴です。

リーマンショックなどの大きな経済的ショックが発生したとき、中部経済は、一挙に影響を受けますが、一方で立ち直りも早いという特徴があります。関西経済は、様々な産業があり、影響は分散されますが、回復は遅いという特徴があります。

これが経済的なショックにどう影響するかという話ですが、リーマンショックや消費税の増税があった時に、今までの経験でも、中部は一挙に下がります。ただし、立ち直りも早いです。関西の場合は、各々の産業が支えるので、あまり下がらないのですが、もとに戻るのも遅いというのが特徴です。

鉱工業生産指数の地域比較で、最近10年ぐらいを見ますと、伸びは中部が1番、近畿が2番、真ん中に全国平均があり、関東がその下になります。中部は上下の変動が大きく、これは1本足打法だけに、少し悪くなってもすぐ修正しますが、近畿はどちらかというとなだらかな動きになっています。

Ⅱ.住みよい関西

去年の8月にイギリスの「エコノミスト」の関連会社が出した統計で、大阪が世界で最も住みやすい都市ランキングで3位になりました。その前の年は、大阪が14位、東京が13位で、東京よりも勝ったということで話題になりました。14位から3位に上がった理由が、2点ありまして、一つは安定性です。これは、安全性を意味しますが100点満点でした。もう1つがインフラです。ここの尺度は「住みやすい」ですので、地下鉄が整備されており、なおかつ、混まずに乗れるというのが、この東京の89.3点を圧倒的に凌駕した理由だと聞いています。

文化・環境が何故93.5点で低いのかというと、これは、イギリス人が住みたいまちとして、英語文化、英語の環境からすると、大阪はまだ93.5点。英語環境の人間から見て、まだまだわかりにくいということです。ここはまだまだ伸びる可能性があり、ここが東京並みになれば、世界1位も夢ではないということです。

このページは、3都のイメージになります。大阪と京都、神戸が各々の特性を持っているということです。

東京を100とした大阪の比率です。これに何かプラスアルファがあると大阪に若者が来ると思います。そのプラスアルファというのは初任給だと思います。初任給の高い会社が5つぐらいあって、学生が大阪や京都、神戸に2泊ぐらいするようできれば、若者を東京から関西に引き寄せることがもっとできると思っています。

労働時間の短さは、奈良1位、京都2位、兵庫4位。残業時間が東京よりも少ないことは事実ですが、これは裏がありまして、女性の正規雇用比率が若干、奈良や京都、兵庫などは低い。そうすると、1日5時間労働や6時間労働など、週5日ではなく週4日の方々も含めて計算しているので、労働時間が短いということになります。

通勤時間の比較です。関東に比べると関西は10分から15分程度、短いです。これは片道なので、往復でその2倍×200日分の幸福が関西にあると言えます。

ラッシュ時の混雑率を関東と比較をしたら、関西は関東の3分の2ぐらいになります。

インバウンドについては色々な方が、関西はすごいと言ってくださっています。中国の方も、まとめ買いし、転売することについて中国で規制ができたので、以前のような爆買いはなくなりましたが、2月は時計や自分の化粧品など、ある程度高いものが売れており、売上高が復活しています。

ただ、各地域における訪日外国人の消費単価が、関西は1人当たり9万3,343円、関東は15万9,436円で、差をついています。この理由は、関東の場合はビジネスパーソンが多いことだと思います。関西の場合は55%ぐらいが観光客であり、ビジネスパーソンの場合は大体ホテルに1人で泊まるため、ホテル単価割る1となりますが、観光客の場合はカップルで来たり、ファミリーで来たりしますので、ホテル代割る2や3になるのが一番大きく影響しています。それ以外に、ビジネスパーソンはいいお土産を購入するということもわかっています。今後の課題としては、より多くのビジネスパーソンに関西に来てもらうことではないかと思っています。

もう1つ、北海道が13万6,668円というのは、おそらくスキーだと思います。ゲレンデのホテルは宿泊代が高く、長期滞在します。北海道は長期滞在型のなせるわざ、関東はビジネスパーソンということで、学ぶべきところは多いと思います。

関空からアジア各地域へのフライト時間は、成田や羽田よりも平均で片道50分弱のアドバンテージがあります。LCCが結構安いので、平均50分弱プラスLCCがあるというのが、関西の強みです。福岡のほうがよりアジアに近いと言われますが、福岡は国際便が4分の1弱です。やはりある程度ロットがあって50分弱というのはすごい強みではないかと思っています。

Ⅲ.若者の活躍・女性の躍進

次に若者の活躍、女性の躍進が関西にとって必要です。我々は、関西の女性の起業家を応援するため、女性起業家等支援ネットワーク構築事業(Ladies’ Entrepreneur Discussions)で、ファイナリストに選出された女性起業家にビジネスプランを発表し、レッドカーペットを歩いてもらう催しをやっています。また、その前の9ヶ月間、関西2府5県で90もの支援団体と一緒に、セミナーやワークショップを開催しています。

関西の特徴は、20~24歳の女性が転出より転入のほうが多いことです。大学や専門学校を出て地元に帰る人も沢山いますが、それ以上に京阪神に来てくれる女性が多く、20~24歳の女性は3,500人ほどの転入超過になっています。これは首都圏を除きますと、関西以外どこにもありません。京阪神の20~24歳の女性が3,500人ほど、ネットでプラスというのは今後の強みです。残念ながら20~24歳の男性はマイナス2,000人ほどです。せっかく来てくれた女性も25~29歳は、マイナス1,000人になってしまい、この20歳以上の男性と25歳以上の女性にどうやって残ってもらうか、また来てもらうかというのが課題だと思っています。

もう1点、関西広域連合や色々な方と結びつき、近畿経済産業局でベンチャー企業数を数えました。このベンチャー企業の定義は、「経営者が自社はベンチャー企業だと思っている企業」です。但し、一部上場企業は除きます。現在、関西にベンチャー企業は1,109社あります。こういう支援を受けられた方々を総ざらいで集めるというのは、我々の知る限り、デュッセルドルフ以外、世界にはないと思われます。

関西のベンチャー企業リストを分析しますと、地域により特徴があることがわかりましたので、その特徴に見合った支援策に取り組んでいきたいと考えています。日本全体では、コンピューター関係やソフトウエアが多いのですが、関西の特徴は、まず医療やバイオが多いことです。それからロボット関連が全国では2%ですが、関西は10%あり、特徴となっています。

地域ごとの特徴を見ると、大阪はITが多いです。産業分類にはバイオがないため、バイオは特別に数えましたが、京都は30%、兵庫は29.9%で、京都や兵庫はバイオ・ヘルスケア関係のベンチャー企業が集積しています。滋賀や和歌山は製造業、ものづくりが多いというような結果が出ました。こういう方々が万博に向け、夢洲でなくても、関西の色々なところで企業として大きくなってくれればと思っています。

今、中小企業の事業承継は日本の重要課題の一つとなっています。関西では、ベンチャー型事業承継に取り組んでいます。これは、既存事業をそのまま引き継ぐだけでなく、新しい事業にも取り組み、ベンチャー的要素を含んだ事業承継を進めていこうというもので、日本全体のキーワードになりつつあります。

最近のトピックスとしては、テレワークや副業、また、白浜のようなところでコワーク、例えば2カ月だけ白浜で働くなどの動きが出てきました。副業や兼業というのは、この4、5年、万博までの間を考えると、キーワードになってくるのではないかと思っています。

外国人労働者の比率が、就業者数に占める外国人の割合は、全国が2.2%ですが、関西はまだ1.6%と、全国比率に達していません。事業者ベースでも、全国では全事業所の3.2%が外国人を雇用していますが、関西は2.5%と、全国レベルに達していません。つまり関西は外国人労働者においては後発組ということがわかりました。

関西では昨年、ベトナム人の雇用が伸び、中国人労働者を抜きました。全国ではまだ中国人労働者数が一番です。ただ、地域によって異なり、福井、滋賀はブラジル人労働者。京都、和歌山は中国人労働者。大阪、兵庫、奈良はベトナム人労働者ですが、ベトナム人労働者数がどこの地域でも伸びているのは事実です。関西は後発部隊だということが驚きでしたが、それとともに、この4、5年で多くの外国人労働者の方が、これは2つ、技能労働者の方と、もう一つ、京都や大阪の大学でベトナム人だけではないですが留学生が多く、留学生がそのまま勤めるというようなトレンドが最近関西では顕著です。ここ数年のうちに外国人労働者の状況は相当に変わってくると思っています。

全国よりも製造業に外国人の雇用が多いのが関西の特徴です。但し、例えば、京都では教育や学習支援等の教育現場で多くの外国人を雇っています。

最後に万博はSDGsですが、関西広域連合やJICA関西と一緒に関西SDGsプラットフォームというものをつくり、今600社ほどに入会いただいています。関西こそSDGsの先進地域だと訴えていきたいと思いますので、まだ入会されていない方は、ぜひ、入会いただければありがたいと思っています。

SDGsとは、何か特別なことをやらなければいけないというではありません。8番には「働きがいも経済成長も」、9番は「産業と技術革新の基盤をつくろう」と書いてありますように、本業をしっかりやっていれば、SDGsになりますので、SDGsを身近なものとして捉えて欲しいと思います。これからヨーロッパやアメリカの企業がSDGsをビジネスとして、過去にCO2削減をビジネスとしてやってきたのと同じように、ビジネスとしてやってくると思いますので、その前に「関西こそSDGsだ」ということを訴えたいと思っています。

Ⅴ.結びに

万博につきまして2点ございます。1つは、2025年5月3日までにもてなしの体制を整えなくてはいけない。これは夢洲だけではなく、地下鉄など色々なところでインフラが今後進んでいくのではないかと思われます。これに併せて、京都は京都駅の開発、兵庫県は三宮の開発などを行っているので、近畿経済産業局の役割は、京都や兵庫をはじめ関西全体を盛り上げることが役割だと思っています。もう1つは、2025年までの6年間ずっと関西が注目を浴び続けるということで、先日、近畿経済産業局で人が乗るドローンを飛ばそう、中小企業の手で飛ばそうという記者会見を行いましたが、万博と関連づけなかったら絶対に記事にならなかったと思います。万博というのは、そうやって夢洲に限らず、色々なところで関西が注目を浴びるということですので、夢洲以外の盛り上げについて、やっていきたいと思っています。

近畿経済産業局はこのような色々な仕事をやっています。ぜひ身近に感じていただき、いろいろおつき合いさせてください。

これで終わらせてもらいます。ありがとうございます。

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